A-cars Historic Car Archives #069
'96 Chevrolet Camaro Z28
96年型シボレー・カマロZ28
Text & Photo : よしおか和
(CAMARO CHRONICLE/2009 May Issue)
Jul. 24, 2025 Upload
第4世代カマロの開発に先駆けて、GMには再びFWD化の計画が持ち上がっていた。さらに並行して、ポンテアック・フィエロの経験を活かし、FRPボディを持つ小型ミッドシップ・スポーツカーに変身させる、というアイデアも検討されていた。結果的にどちらの案も具現化しなかったのは、80年代の後半になってGMの経営状況が思わしくなくなったからだ。つまり、新たなモデルをゼロから開発するには膨大なコストが必要となるからである。もちろん、オーソドックスなRWDのスポーティカーとしてカマロが根強い人気を得ていたことも理由のひとつには違いない。そうして、プロジェクトチームは基本的に従来のシャシーを活かしつつ『少ない予算で世界最高レベルのスポーティカーを作る』ミッションに取り掛かったのである。
モデルイヤーでいうところの93年、新しいカマロは見事な変身を遂げてデビューした。より空力特性に優れたボディはエッジ部分を極端に減らし、全体的に丸みを強調。エンジンのマウント位置を後退させ、ウインドシールドを大きく寝かせ、過去のアメリカ車にはなかったフォルムを実現していた。サスペンションやステアリング系にも新設計のシステムが採用され、サブフレームも復活した。これらの結果として、一度ドライブすれば歴然とその差を感じるほどに、先代モデルから大幅にボディ剛性が向上していた。
第4世代になってもZ28は健在で、こちらにはすでにコルベットでその性能の高さを実証していたLT1(350cuinV8)が搭載された。このユニットはディストリビュータの位置がフロント側にあるため、エンジン・コンパートメントを眺めていると、あたかもこのボディに搭載するために設計されたV8のようにも思えてくる。そして、このカマロのトータル・パフォーマンスはGMのスローガンどおり、歴代モデルとは比較にならないくらい高いものだった。
今回撮影したのはまさにそのZ28である。なお、第4世代カマロは98年型でフェイスリフトが行われると同時に、Z28の搭載エンジンもLS1へと移行しており、さらにストロングなポニーカーへと変化を遂げている。
エンジンはシボレー・スモールブロックV8(SBC)としてはジェネレーション2として区分される350cuinV8のLT1。カマロでは第2世代の初期モデルのZ28に同じLT1というコードネームを持つユニットが搭載されており、“かつてのマッスルハートの再来”というイメージを抱かせるネーミングである。スペックは、この96年型で最高出力305hp@5500rpm、最大トルク325lbft@2400rpm。数値的にもV8パワーウォーズ全盛期を彷彿させるが、体感的には決して暴力的な加速ではなく、伸びのあるスムースで美しい速さをもたらしているという印象。なお、98年型からはこのLT1からSBCジェネレーション3となるLS1にスイッチされ、さらにストロングでモダンなパフォーマンスを実現したスポーティカーへと変身している。
ウインドシールドを極端に寝かせるなどエアロダイナミクスを追求したボディは、エッジを最小限にとどめ、新世代らしく全体的に丸みを帯びたフォルム。正規輸入車におけるグレードはスポーツとZ28に大きく二分され、前者はV6ユニットを、後者はV8ユニットを備えていた。グレードを外観から判別するポイントは多くなく、Z28はルーフおよびクォーターピラーがブラックにペイントされていること、Z28を示すバッジが与えられたことなどとなる。なお、第4世代カマロのデビューイヤーとなる93年に、Z28はカマロとして通算4回目のインディ500マイル・レース・オフィシャル・ペースカーに選ばれ、翌94年型からはコンバーチブル・モデルがラインナップに加えられた。