A-cars Historic Car Archives #064

'76 Chevrolet Chevette Woody Coupe

76年型シボレー・シェベット・ウッディ・クーペ


Text & Photo : よしおか和

(Love for the Atrocities!/2016 Feb. Issue)

 Jun. 19, 2025 Upload

 

 俗にサブコンパクトカーと呼ばれるジャンル、すなわちコンパクトカーより更に小さいモデルシリーズは、アメリカ車でいうとAMCグレムリンやフォード・ピントがパイオニアで、時代でいうと70年代初頭の話だった。GMはというと、もともとビッグスリーは小型車の開発に関しては遅れていたというか、大して関心もなかったこともあって特に危機感を感じることもなく放置していた感があるのだが、70年代も半ばになるとトヨタやVWといった輸入車勢が勢いを増し、世の省エネブームも手伝って小型車人気が急激に高まった。そこでシボレー・ブランドから投入されたのがGM初のサブコンパクトカーとなるシェベットで、モデルイヤーでいうと76年のことである。ホイールベースが僅か94.3インチのハッチバックスタイル・クーペは、明らかに当時大ヒットしていたVWラビットを意識したもので、標準で85cuin(約1400cc)の4気筒エンジンを搭載し、後輪を駆動して、ハイウェイで40mpg(※)、シティで28mpgという低燃費を当時の広告でアピールしていたことを記憶している。

 

※mpg=mile per gallonの略で、1ガロンあたりの走行マイルを示すアメリカで一般的な燃費単位。1mpg=約0.42㎞/リットル。

 

 

 今見ると、ボクシーで特に何の変哲もない小さな2ボックスカーだが、それでも70年代らしさ、アメリカ車らしさを主張しているのは、このシボレーならではの柔和な、それでいてなんともバタ臭い(アメリカンテイストいっぱいという意)マスクがあるからこそ。この雰囲気はライバルの(もしかしたら相手はそうは思ってなかったかもしれないが……)トヨタやVWでは持ち得ないものなのである。しかも撮影車はオリジナルでアメリカン・カントリーワゴンの定番アイテムとなるウッドグレイン・デカールをボディサイドに備えたウッディ・クーペで、身体中でその素敵なテイストを強くアピールしている。そしてなにより嬉しいのが、この言わばごく普通の大衆モデルが40年の時を経てオリジナルの姿を保ち、今なお元気に走りまわっていることである。

 


ホイールベース94.3インチ(約2395㎜)、全長×全幅×全高は158.7×61.8×52.3インチ(約4031×1570×1328㎜)というディメンションは、現代で言えば日本車のコンパクトカーよりも小さなサイズに感じられる。まさに可愛いシボレーである。


トヨタ・カローラ、ダットサンB210、VWラビットといったインポートカーの顧客層をターゲットに開発投入されたシェベットだが、その風貌はベガやカマロをも連想させるシボレー独特のデザイン。キュートな中にもキリッとしたものを感じさせる。


ウッディ・クーペはボディサイドにウッドグレイン・デカールを備えるのが特徴だが、従来のカントリーワゴンのそれとは違ってモールディング等によるフレームは与えられず、周辺にアクセントとして同じマテリアルでストライプデカールが貼られている。このなんともチープな仕様が今となっては逆に好感度を高めているとも言えよう。


搭載エンジンは標準で85cuin(1400cc)のOHC4気筒。最高出力は52hp@5200rpm、最大トルクは70lbft@3600rpmとなるが、この小さなエンジンに組み合わされるATがTH350というところがなんとも面白い。独自のATを新たに開発する時間も予算もなかったのだろうと想像できるが、非力なエンジンゆえにATが滑る可能性が極めて少ないのは嬉しいこととも言える。ちなみにオプションで97.6cuin(1600cc)の4気筒(60hp/82lbft)も用意されていた。


インテリアには70年代のシボレーではお馴染みのクロス&バイナルのバケットタイプ・シートがセットされるが、これはウッディ・クーペならではの上級なカスタムインテリア。ダッシュ周りやドアパネルにあしらわれたウッディのデコレーション・パネルも同様である。


オリジナルのホイールは13インチ、タイヤは155/80-13で、現在も新車時と同じサイズのタイヤがセットされている。