【10月号巻頭特集切り抜き】60年型サンダーバード・HTクーペ/白い雷鳥の魅力

Text & Photo:勝村大輔 Dice-K Katsumira

 世は令和となり、すでに忘れ去られつつあるが、つい半世紀ほど前まで横浜の本牧周辺は米軍将校の住宅が建ち並び、フェンスの向こう側にはアメリカが広がっていた。そんな時代の横浜で青春時代を過ごしたのが、今回紹介する山口さんだ。当然だが若い頃に憧れたのはアメリカ車。22歳で73年型カマロを入手すると、周囲の環境もあってチューニングに目覚め、当時の立川基地で開催されたドラッグレースなどにも参加。日本におけるアメリカ車チューニング草創期をリアルに体験してきた。
 そんなスピードフリークだった山口さんがその後何台か乗り継いだ末に辿り着いたのが、86年に入手したこの60年型サンダーバードだ。
「当時気だった『サンセット77』っていうドラマに登場するサンダーバードに憧れて、このクルマに行き着きました。それまで     色々なクルマに乗ったけど、このクルマになってからは乗り換えようと思ったことはないですね」
 30年ほど前にフルレストアを敢行し、現在でも美しい輝きをキープしている。レストア時にも塗装などを除いて自身の手で作業を行なったというスキルを持っており、今でも簡単なメンテナンスは自宅ガレージで自ら行なっているそうだ。購入後40年が経過した今でも当時と変わらずスクエア・バードを溺愛する山口さん。その情熱は今も美しく保たれたボディが物語っている。


華やかなアメリカを象徴する伸びやかなデザイン
ヘッドライト周辺のスペース確保に合わせて両端が迫り上がったボンネットと、大きな開口部を持つクロームのグリルが特徴的なフロントマスク。テールランプは59年までは片側2つだったランプが3つになった。


50’sと60’sの特徴を兼ね備えたディテールの数々
リアエンドのテールフィン、フロントフェンダー前端のオーナメント、プレスラインに合わせたドアノブ等、50年代と60年代の特徴を兼ね備えたディテールが見る者を魅了する。


社外のワイヤースポークを採用
オリジナルのホイールはスチールだが、オーナーの好みでクレーガーのワイヤーホイールとG78-15サイズのホワイトリボンタイヤの組み合わせに変更されている。


エンジンは352cuinV8
搭載されるエンジンはYブロックの後継モデルとして登場するFEシリーズの352cuinV8で300馬力を発生する。組み合わされるトランスミッションは3速AT。


セパレートシートの近未来デザイン
ダッシュはテール周りにも似た左右対称デザインを採用。全高を低くするため、大きく張り出したセンタートンネルにセパレートシートの組み合わせが特徴。センターコンソール前端のクーラーの操作パネルも美しい。


OWNER:山口敏さん
若い頃は73年型カマロで立川ドラッグなどにも参加していたという山口さん。今なお“熱い”AカーGUYのひとりだ。



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