本気で走るならこれが当たり前。1971年の リアル・スタイル。

Text & Photo:James Maxwell

現在、MOPARマッスルの王道がオリジナル・スタイルにあるのは否定できない。しかし、マッスルカー全盛時代を謳歌した若者たちの常識はそうではなかった。アフターマーケットのホイールを履き、へダースを入れ、さらなるパワーアップを目論む。そんな時代だったからこそ、グランド・スポルディング・ダッジのようなディーラーが繁栄したのだ。

 マッスルカー全盛期にその名を轟かせたディーラーは、その多くがマッスルカー自体の販売はもちろん、チューンナップやパフォーマンスパーツの販売、そしてレース活動にも積極的だったという共通点がある。そしてMOPARその代表格と言えるのがMrノームことノーマン・クラウスが率いるシカゴのダッジディーラー、グランド・スポルディング・ダッジ(以下GSD)である。

 元来彼らはメーカーを問わない中古車ショップだったが、ダッジのディーラー権を取得すると若者世代にターゲットを絞り、マッスルカーを積極的に取り扱うようになった。そして車両を販売するだけでなく、様々なパフォーマンスパーツを装着したマッスルカーを販売するようになり、結果的に全米で最も有名なMOPARマッスルカーのディーラーとなったのだ。

 彼らが独自に製作して世に放ったパフォーマンスパッケージも多い。知られたところでは383cu inと440cu in仕様があったダートGSS、426HEMIを搭載し、スーパーストック・パッケージ、シックスパック&スーパーチャージド・デーモン、そしてナイトロメタン仕様のHEMIドラッグレーサーなどが挙げっれるが、こうしたモデルを通じてMrノーム、そしてGSDの名前がハイパフォーマンス・ダッジの代名詞として浸透したのだ。そして1971年頃には大規模なディーラーに成長しており、ショールームにはチャージーR/T、チャレンジャーR/T、スーパービー、デーモン340といったダッジのホットモデルがズラリと並べられ、ショップでは連日ダイノ・チューニングやパフォーマンスパーツの取り付けが行われていた。さらにこの頃、彼らはナイトロメタン&スーパーチャージャー仕様のファニーカー、スーパー・チャレンジャーを全米各地で走らせており、その名はアメリカ全土に轟いていた。

 ここで紹介する紹介するHEMIチャレンジャーは、そんな頃にGSDから販売された1台だ。426HEMI、4スピード、そして4・10リアエンド。これだけでもパフォーマンスへのこだわりが窺えるが、さらにアメリカンレーシングのトルクスラスト、巨大なスクープのついたグラスファイバー製エンジンフード、等長ヘダース、パフォーマンス・エアクリーナー、クローム・バルブカバーなどがGSDファクトリーで装着された上で納車されている。そしてその状態をキープしたまま現在に至っているサバイバーなのだ。これはオリジナル・スタイルではない。しかしこれが、これこそがマッスルカー全盛時代に若者たちが望んだリアル・スタイルなのである。この姿をありのまま、そして美しいままに現在残してくれたオーナーには心から感謝したい。


至高のMOPAR MUSCLE 70’s MOPARマッスルの華

’71 Dodge Challenger R/T 426HEMI

搭載エンジンは最強の426HEMI。オリジナル・オーナーの意向により、等長ヘダース、クロームバルブカバー、パフォーマンス・エアクリーナーといったアフターマーケット・パーツがGSDファクトリーで装着された上で納車されている。


巨大なエアスクープが組み込まれたグラスファイバー製エンジンフードもアフターマーケット製で新車時に交換されたもの。迫力は増しているが、フードやシェイカーに備わるエンブレムが消えたことで一見しただけではHEMIカーであることはわからない。


撮影車はオプションコードA45=フロント&リア・スポイラー・パッケージ選択車両で、エアロダイナミック・リア・スポイラーと呼ばれたリアウイングと、左右に分割されたフロントスポイラーを装備。このフロントスポイラーは70年型チャレンジャーT/Aに採用されたものだ。


アメリカンレーシングのトルクスラストも納車時から履いていたもの。サイズはフロントが15×7、リアが15×8.5。タイヤはグッドイヤーのポリグラスGTをチョイスしていた。


フェンダータグを見るとN96とあり、元々この車両にはシェイカーフードが備わっていたことがわかる。ちなみに記録を見るとシェイカーを選択した71年型チャレンジャーは171台。この他には、E74がHEMIカー、A34がスーパートラックパックを示している。


サバイバーとは信じられないコンディションにあるインテリア。撮影時にオドメーターが示していた距離は僅か5308マイル。もちろんオリジナルマイルだ。リアのシートベルトのバックルは新車時に付いているビニールを被ったままにある。 


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