A-cars Historic Car Archives #057

'95 Ford Taurus GL Station Wagon

95年型フォード・トーラスGL・ステーションワゴン

 


Text & Photo : よしおか和

(Mama's Mighty Groceries Getter / 2007 Apr. Issue)

Apr. 28, 2025 Upload

 

 1990年代に売れたステーションワゴンを振り返るなら、忘れてはならないモデルがもうひとつある。アメリカでも、そして日本でも、ファミリー層を中心にウケまくったフォード・トーラスがそれだ。

 兄弟分のマーキュリー・セーブルとともに86年型でデビューを果たしたFWDのミディアム・サルーン、トーラスは、4ドア・セダンと4ドア・ステーションワゴンをラインナップしていた。両車ともに当時としてはえらく斬新な曲線を多用したボディラインを採り入れており、新世代のAカーを代表するモデルのひとつとして注目された。特にステーションワゴンは人気者であり、90年代に入ってからは正真正銘の大ブレークを果たしている。もともとトーラスは本国ではベストセラーカーであり、生産台数においてもホンダ・アコードと常にトップを争っていたモデル。なのでこれが日本で受け入れられたのも当然と言えば当然であり、つい先日、フォードが2008年モデルにおけるトーラス/セーブルの復活を発表したのも、そんな輝かしい実績を取り戻したいという願望を充分に含んでのことだろう。

 ホイールベースは106インチ(約2692mm)で、全長193.1インチ(約4905mm)、全幅70.8インチ(約1798mm)。サイズ的にも日本の道路事情にぴったりで、レジャービークルとしても申し分ない。前出のリーガル・エステートと比較すると、全体的なデザインがトラディショナルなAカーとは随分と異なっているせいか、いわゆるバタ臭さを感じさせない。だがそれでも、3人掛けのフロント・セパレート式ベンチシートは、日本車やヨーロッパ車のワゴンでは味わえない広々とした居住空間と緩いカンジのドライバビリティを体感させてくれて、いかにもAカーらしい。荷室にサードシートが備えられるところもファミリー・ユースを前提に考えたらとても嬉しい要素だろう。

 

 

 グレードは3.0リットルのV6を搭載するGLと3.8リットルのV6を搭載するLXに分けられており、登録台数では前者の方が圧倒的に多かった(ちなみに本国には4シリンダー・エンジンを搭載するモデルが91年型まで存在していた)。撮影車はそのGLモデルであり、モデルイヤーは95年型となる。95年型というと この世代のトーラスの最終型であり、翌96年型からはモデルチェンジを遂げたニュー・トーラスが登場している。だが、正直なところそちらのモデルは人気がなく、というより95年型までの初代モデルが爆発的な売れ方をしただけに、トーラスといえば誰もがこの姿を思い浮かべてしまうのである。

 しかし、最近になって意識してみると、街中でこのトーラス・ワゴンの姿を目にする機会が急激に減ったように思える。もしかすると例の登録初年度から11年を経過した時点で割増となる納得のいかない税制が影響しているのかもしれないが、新車がたくさん売れたクルマはいずれ中古車市場にもタマ数が溢れかえり価格が大幅に下がってしまう、というセオリーも関係しているのかもしれない。ただ、現在の相場を考え併せた場合、コンディションの良い個体にさえ出会えれば、これほどコストパフォーマンスの高いユーズドAカーも他にないのではないだろうか。低予算でイージードライブを楽しめるユーティリティ・ビークルを探すのであれば、いち押しなのがこのクルマだ。

 取材車はやはり筆者の友人であるAカー専門ファクトリー主宰者のワイフの愛車。例によってスーパーマーケットへの買い出しや子供たちをサッカーグラウンドへ送迎するのに毎日使われているものだ。加えて家族みんなでキャンプに出掛ける時も、これに荷物を満載し、さらにルーフラックにも多くの荷物を括りつけてロングドライブするという。まさに頼もしいファミリービークル、もはやステーションワゴンは家族の一員なのである。

 


見方によってはAカーらしさが薄れてしまったともいえるトーラスのインテリア。しかし、このベンチシートによるゆったりとした居住性、タイトな印象を与えないドライバビリティは、間違いなくAカー独特のテイストである。


上に跳ね上がるカタチのリアゲートを開くと、クルマのサイズ以上に広々とした感のあるラゲッジスペースが現れる。さらにそのフロアを持ち上げると、子どもには充分なサイズのサードシートが出現。ファミリーカーとしてなくてはならないアイテムといえるだろう。


エンジンは182cuin(3.0L)のV6OHV。ボア3.50×ストローク3.15インチで、最高出力140hp@4800rpm、最大トルク165lbft@3250rpmを発揮する。なお、LXモデルにはボア3.80×ストローク3.40インチの232cuin(3.8L)V6が搭載されていた。



80年代以前のトラディショナルなアメリカン・ステーションワゴンと比較すると、一段と新しい印象を強く与えるトーラスのデザイン。曲線を大胆に採り入れた試みは、その発表当時あまりにも斬新過ぎて、一部のAカーファンには受け容れられなかった。しかし、結果的には大成功を収め、全米のベストセラーカーとして長く君臨したのだった。