A-cars Historic Car Archives #055
'95 Chevrolet Caprice Classic Wagon
95年型シボレー・カプリス・クラシック・ワゴン
Text & Photo : よしおか和
( The Final "Full Sized" Station Wagon / 2008 Oct. Issue)
Apr. 17, 2025 Upload
シボレーのフルサイズ・パッセンジャーカー、カプリスは、91年型でフルモデルチェンジを果たし、正確にはカプリスとカプリス・クラシックというふたつのシリーズに分かれた。そして、ステーションワゴンは当初カプリスにのみ設定されたのだが、93年型以降はシリーズ自体がカプリス・クラシックとして統合され、正式にカプリス・クラシック・ステーションワゴンと呼ばれるようになった。
カプリス・ワゴンといえば、ひと昔前に若者を中心にブレイクしたあのカスタム・スタイルが記憶に残る。それらは、ボディサイドのモールディングやルーフキャリアを取り払うなどしてスムージングが施され、その多くはリアバンパーを外してロールパンに変更。そしてほどんと全てがコイルスプリングを交換、あるいは加工するなどしてロワードを施し、足元には当時流行したビレットホイールが輝いていた。その趣味やセンスを否定する気は毛頭ないが、結果的にオリジナルでこのモデルが持つ性能、ドライバビリティを失ってしまった固体はあまりにも多い。それでも多くのユーザーたちが流行のルックスに走る傾向を、筆者は本誌誌面でも随分と嘆いたものだ。
あの流行から10年あまりの月日が経過し、例のカスタム・スタイルを持ったカプリス・ワゴンの大半が街中から姿を消した。あれらがどこに行ってしまったのかはわからないが、現在になってオリジナルのカプリス・ワゴンを探してみると、いかにそれが少なかったのかということを思い知る。そんな中、ホイールこそアフターマーケット製を奢っているが、車高もボディのデコレーションもストックのままの個体と出会い、迷うことなく撮影をお願いした。そして、すっきりと美しいその姿をファインダーに捕らえ、前出のビュイック(※)にはない、シボレー・フルサイズ・ステーションワゴンならではの味わいを改めて確認することができた。それを言葉で表現するならば、シンプルでカジュアルでスポーティで……といったところになるのだろうが、それよりも、ここは写真を見比べて感じ取ってもらった方がいいだろう。
※ヒストリックカー・アーカイブVol.54の93年型ビュイック・ロードマスター・エステート・ワゴン
ちなみに、撮影車は95年型のカプリス・クラシックで、俗に言う後期型である。内外装の細かなディテールが前期型とは異なるほか、搭載エンジンの違いも大きなポイントになる。91年と92年型は先に記したようにカプリス・シリーズのステーションワゴンであり、搭載エンジンは標準ユニットである305cuinV8だけの設定だった。93年型のカプリス・クラシック・ステーションワゴンでは、ビュイック・ロードマスターに供給されたものと同じ180hpの350cuinV8がオプション設定され、94年型からはロードマスター同様に350cuinのLT1ユニットへと移行する。つまり、撮影車はそのLT1を搭載するモデルということになる。カプリスに搭載されたこのLT1は、圧縮比やカムシャフトのプロファイルといった仕様と、それに伴うパワー数値などが異なるものの、基本的には97年型までの4thカマロZ28と共通するパワーユニット。260hp@5000rpmというカタログデータが示すように高回転型の力強いV8エンジンであり、このエンジンがクルマそのものの性格も変えたと言っても間違いではないだろう。そう思うと、これが96年型を最後に消滅してしまったことが残念でならない。できることならば、さらに次の世代のシェビー・スモールブロック、LS1ファミリーを搭載したフルサイズ・ステーションワゴンも味わってみたかったと、つくづく思うのである。
ホイールベース115.9インチ(約2499㎜)、全長×全幅×全高は217.3×79.6×60.9インチ(約5519×2022×1545㎜)というディメンションはロードマスターとほぼ同じ。もちろん同年のシボレー・パッセンジャーカーでは最大のボディサイズだった。
94年型から搭載された350cuinV8のLT1は、一部の仕様こそ異なるものの、カマロZ28あるいはコルベットなどとも共通するジェネレーションⅢのシェビー・スモールブロックV8。この95年型カプリスでは、圧縮比10.0:1で、最高出力260hp@5000rpm、最大トルク330lbft@3200rpmというカタログ数値を示している。実際にドライブしてみても、ある意味ではフルサイズ・ステーションワゴンらしからぬ高いパフォーマンスを実感できる。なお、取材車のエンジン・コンパートメントは、整備性向上の目的からオリジナルの化粧カバーが取り外され、エアクリーナー・ダクトをカマロZ28と同様のパーツに交換している。
ファブリック素材のシートを採用し、カジュアルな雰囲気を強調したシボレー・ブランドらしいインテリア。ダッシュまわりのデザインは前期型から変更を受け、スピードメーターとオドメーターはデジタル表示になっている。トランスミッションは4AT。