A-cars Historic Car Archives #035

'67 Buick Riviera

67年型ビュイック・リビエラ


Text & Photo : よしおか和

('60s General Motors Specialty Coupe/2011 Apr. Issue)

 Nov. 22, 2024 Upload

 

<このコンテンツはヒストリックカー・アーカイブ Vol.34 66年型オールズモビル・トロネードからの続きとなります>

 

 1960年代にGMが開発した最初のスペシャリティ・クーペがビュイック・リビエラ。そのデビューはモデルイヤーでいうと1963年のことだった。

 当時のビュイックにはスペシャル/スカイラーク&ルセーバー/ワイルドキャット&エレクトラ225と、大きく分けて3種類のボディサイズが存在したが(順にコードでAボディ、Bボディ、Cボディと称された)、リビエラにはそれらとは共通しない新開発のEボディが与えられ、スポーティかつラグジュアリー、エレガントで速いクーペというコンセプトの下に生み出された。また、エクステリア及びインテリアのデザインも、他シリーズから流用することなど一切せずに独自のスタイルを確立。流麗でスタイリッシュでゴージャスでダイナミックでセクシー……と、形容詞をいくら並べても表現できないくらいに新鮮な魅力に溢れたモデルに仕上げられていた。

 今回スポットを当てたのは67年型。フォルムを大幅に変更してイメージチェンジを果たした2年目のモデルとなる。ボディは初代モデルと比較するとやや大きくなり、ホイールベースも2インチほど延長され、流麗でダイナミックなイメージが益々強調されている。Eボディは前出(編集部注・ヒストリックアーカイブ Vol.034)のトロネードやこの67年型から登場したエルドラドと共通のシャシーだが、このリビエラはコンベンショナルなRWDレイアウトとなっており、フードの下にはビュイック製の430cuinV8を宿している。ボア4.188×ストローク3.90インチというビッグ・キャパシティながらショート・ストローク型のエンジンは、教科書通りにレスポンスよく軽やかにまわり、同じハイパフォーマンス・モデルでもシボレーやポンテアックとはひと味違った感覚の加速を楽しませてくれる。

 

 

 そんな走りを象徴するかのような精悍なルックスもまたこのリビエラの身上である。いま見るとどことなく野暮ったい感じが否めないこの時代のビュイックのラインナップの中にあって、リビエラはひと際スタイリッシュなのである。特に66年型と67年型は、ワイド&ローに構えた姿勢とコンシールド・ヘッドライトを備えて凹凸を効かせたワイルドな表情が見事にキマっており、実にニクいキャラクターと言えよう。

 当時の価格はもちろん高価なレンジに設定されており、67年型の標準ファクトリー・プライスは4469ドルとなっている。同年型のスカイラーク・クーペが2665ドル、エレクトラ225コンバーチブルでも4421ドルであり、価格的な意味でもスペシャリティ・クーペだったのである(それでも4万2799台という生産台数が記録されており、当時のアメリカの景気の良さが窺い知れる)。

 今回撮影したブラックのオリジナルカーは良好なコンディションにあり、カタログから抜け出したような美しい姿を筆者のカメラの前に晒してくれた。インテリアもきっちりとレストアされており、しっとりと落ち着いた雰囲気を漂わせる。もちろん見てくれだけではなく430ユニットは実にヘルシーだし、ハンドリングもタイトでトータルな走りからまったく古さを感じさせない。

 そういえば、昔の広告でこのリビエラの横で白髪混じりの男性がチャーミングな女性をエスコートしている写真を見た記憶がある。おそらく現在の筆者はその写真の男性モデルと同じかそれ以上の年齢だろうし、できればこんなクラシック・クーペと毎日暮らしてみたいものだが……。こうして仕事で魅力的なクルマを撮影する度に、コレクタブルカーのバリューがどんどん高騰して気軽に手に入れられなくなってしまった現実を恨めしく思うのである。

 


ホイールベース119インチ(約3023㎜)、全長×全幅×全高は211.2×78.8×53.2インチ(約5364×2002×1351㎜)というビッグなスペシャリティ・クーペ。そのサイズを活かしたダイナミックなフォルムは迫力満点だ。


搭載エンジンはボア4.188×ストローク3.90インチの430cuinV8。圧縮比10.25:1、ロチェスター4MVクワドラジェット4バレル・キャブレターを搭載して、最高出力360hp@5000rpm、最大トルク475lbft@3200rpmというカタログ数値を誇る。70年代に入って登場する455とは違うファミリーに属するエンジンだが、ビッグ・キャパシティでも軽やかに吹け上がる名機として今に伝えられている。


この時代に流行したコンシールド・ヘッドライトを採用したマスクがクールなイメージをもたらしている。ちなみにリビエラでは、第1世代の最終となった65年型から69年型までがコンシールド・ヘッドライトを採用した。


シックでオーソドックスなインテリアでは、プレーンなベンチシートが好印象。目盛りの振られた円筒が自ら回転することで速度を示すユニークなシステムの速度計は前出(編集部注・ヒストリックカー・アーカイブVol.034)のトロネードとも共通するもの。


ビュイック独自のデザインを採用したスタイルド・ホイールは、スポークがクローム処理されているのが特徴。センターマークにはリビエラのマークが飾られる。撮影車は当時流行したレッドリボン・タイヤの復刻版を組み合わせている。