A-cars Historic Car Archives #006

'70 Plymouth Road Runner Superbird 426HEMI

●70年型プリマス・ロードランナー・スーパーバード 426HEMI


Text & Photo : よしおか和

(HEMI_The Ultimate MOPAR Muscle/2012 Sep. Issue)

 Jun 1, 2024 Upload

  NASCARのホモロゲーション・モデルを語る上で、忘れてはならない存在がこのモデルだろう。

 426HEMIの登場以来、ますますハイスピード化していったレースシーンでは、マシンの空力特性が非常に重要な要素となった。そしてそこに注目してクライスラーが開発したのが、フロント・グリルやリア・ウィンドウなどを他のモデルから流用して空力性能を向上させた69年型ダッジ・チャージャー500だった。これに対してライバルのフォードも、フロント・ノーズを大きく延長させたトリノ・タラデガとサイクロン・スポイラーを投入し、空力競争は激しくエスカレートした。そんな中で新たにクライスラーが投入したのが、69年型チャージャー・デイトナと70年型ロードランナー・スーパーバードである。

 デイトナ、スーパーバードともに、前方に大きく突き出したノーズ・コーンとルーフよりも遥かに高いリア・ウイングを備えていたのがいちばんの特徴だが、さらにフェンダーやAピラー、リア・ウィンドウなどにベースモデルとは異なる形状のパーツを採用するなど、空力特性の向上が徹底されていた。もちろん、NASCARのレギュレーションに合わせて両車ともにレースカーと全く同じフォルムのモデルが市販された。チャージャー・デイトナは503台、そしてスーパーバードは70年型からホモロゲーション規定が1000台となったこともあって1935台(そのうちHEMIを搭載したのは135台)がラインオフを果たしたのである。

 


巨大なノーズ・コーンとリア・ウイングはチャージャー・デイトナと共通するも独自のアイテム。フェンダーはコロネットから流用。Aピラーには空気の流れを乱さないためのパーツが追加され、リア・ウィンドウも凸面にデザインされた専用パーツとなっている。また、バイナルトップも特製のパーツだ。


この時代のストリートHEMIはコードネームがA103に変わっているが、その内容には変わりはない。梨地のブラックにペイントされたバルブカバーが物々しいエンジン・コンパートメント。ロードランナーならではのエアクリーナー・ハウジングには、宿敵コヨーテのカートゥーンが描かれている。


リア・エンドにはDANA60を装備し、シュアグリップ(ポジトラクション)が組み込まれる。


NASCARのホモロゲーションであり、HEMIカーである撮影車だが、トランスミッションはコラムシフトのAT。もちろんこれがオリジナルの姿であり、そこに敬意を表して仕様変更はされていない。当然エアコンは装備しない。



急激にハイスピード化するレースに危険を感じ、NASCARは71年から安全性を向上させるべくレギュレーションを改定。これにより、空力を追求したマシンの搭載エンジンは排気量が305cuin以下に制限されることになり、結果的に71年型の新車のラインナップからウイングカーは姿を消した。